藤棚を見に行くのは、
ずっと先延ばしにしてきた小さな夢だった。
花粉症対策を万全にして向かった先で、
思っていた以上に静かで、
不思議な存在感を放つ藤と出会った。
* * *
ついに決行した、藤棚を見に行く作戦。
花粉症対策の眼鏡とマスクをして、準備は完了。
———いざ決戦の地、のつもりだったのだが。
初めてこの目で見た藤棚は、なんとも静かだった。
あまりの大きさに、木全体を写真に収めることはできないほどだ。
まあ、「決戦の地」などという名前は似合わなかったよね(当たり前だ)。
一言で表すなら、藤の第一印象はこうだ。
「難しい」
バラのような「華やかさ」とも、桜のような「儚さ」とも、何か違う。
まるで上下で、別の植物を見ているみたいだった。
頭上では、繊細な薄紫の花弁がゆらゆら揺れている。
そのまま木の根元に目をやると、ギャップに驚かされる。
ねじれをなした幹はどこか無骨にも見えるが、 とても力強くて美しい。
このちぐはぐさをどう受け取ったらいいのか、少し戸惑った。
見る人やタイミングによって違った見え方をするのだと思う。
きっと、他では体験できないものだろう。
これからも、美しい姿を毎年人々に見せてほしいと感じた。
私は、一度でもうお腹いっぱいだ。


